サンミゲルの芸術家たち

日本で見た、旅番組で出てきたカフェに通っていた、ある日、番組に出ていた(といってもチラッと)アントニオに会った。TVで見たよ、と言ったら大喜び。日をあらためて、彼は工房を案内してくれた。石畳の町中をサンドバギーでカフェまで迎えに来て、「まぁ、乗って」といわれ工房へ。

彼の作品をいっぱいに飾った部屋がなんとも見事!原色だけで作られる芸術センスはメキシコ特有。他にも原色だけを使う国や地域はあるけれど、それぞれに違う。

彼の作品は、メキシコ最大のお祭り「ディア・デ・ムエルト(死者の日)」の主人公カトリーナをはじめ、カラベラ(骸骨)たちが登場するブリキアート。風刺がきいていて、笑ってしまう。

彼の作品をハワイやヨーロッパのギャラリーなどで見たことがあったので、出所はここかぁ、とちょっと感動。彼が出ている番組の録画を見せたら、大はしゃぎ。このあとも、アントニオの工房には何度か訪ねた。

アントニオは、英語を話すので良かったけれど、スペイン語を全く話さない私は、スペイン語教室へ。すると「レベル・ゼロのクラスはありません。」とあっさり断られ、知り合いに聞いて個人レッスンを頼んだ。買い物ができるくらいにはなったけど、これがヨーロッパの言語かぁ、と実感。英語を考えた人、すごいね。

次に、美術学校。サンミゲルには、二つの歴史ある美術学校があって、その一つに見学に行ってみた。絵画、陶芸、染織、音楽やバレエなど幅広くクラスがあって、私は、ブリキアート(オハラタ)のクラスと絵画(アクリル画)のクラスに入った。

先生はスペイン語しか話さないけれど、なんとクラスの人たちは英語を話す。聞けばアメリカやヨーロッパからの人々。わからないところは彼らが説明してくれる。

ブリキアート(オハラタ)にもいろいろあるけれど、私が選んだのは「照明器具」。この町の夜の照明が素敵で、魅了されてしまった。オハラタの照明器具からこぼれる灯りが本当に綺麗で。

町のサンデーマーケットに行くと、美術学校の人たちも店を出している。そんな “にわかアーティスト” から、人生かけちゃってる “本気の芸術家” まで、確かにアーティストの多い町。

そして、なんとこの町にも日本人の “本気の芸術家” がいた。美術学校で彫刻をやっている、と人伝てに聞いた。その日、訪ねると外の芝の上に置いてある等身大ほどの石をノミと木槌で彫っていた。そして、そこからの紹介で、これまたなんと日本人のガラス作家に会った。彼らと、久しぶりに話す日本語がたまらなく快適だった。

出発前に、吹きガラス工房があるかなと想像して、到着してすぐの頃、相談したメキシコ人が教えてくれた住所に行くと、そこは “ガラス工場” だった。再生ガラスも無骨でいいけれど、残念ながら違うなと思っていた。吹きガラス作家はいないようだけど、まぁ、 “ガラス作家に会う” という目標は達成ってことで。

この作家は、日本の芸大でキルンガラスを専攻していて、サンミゲルのアパートの屋上にガラスを焼く窯(キルン)を造っていた。資材は日本から取り寄せて。かなり本気。

個展をするというので、オープニングの日にギャラリーをのぞくと、ハイソサエティの来客たちで賑わっていた。 “パトロンを見つけないと” って話すのを聞いて、芸術家だなぁ、いろんな生き方があるんだなぁと。作品を鑑賞しながら。

それにしても、昼間のサンミゲルでこんな人たちに会ったことがない。確かに、セントラルから少し離れると、豪邸がたくさんある。この町には、こんな人たちも住んでいるんだ。

この町に到着した頃、平日の朝から、公園に働き盛りの男性が、たくさんベンチに座っているのを、すごく不思議な光景に感じていた。私自身の知る世界が小さく、極めて個人的な、固定観念による感想だけど、それでも生きていけるんだね、と思ったのを覚えている。これまで、”生まれてから、勉強する年齢、働く年齢、退職する年齢まで” が、勝手に決めらている世界のことしか知らなかったから。

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