サンミゲル・デ・アジェンデ

サンミゲル行きのバスに乗って、窓の外を眺めていると、メキシコシティーの街並みに目が釘づけ。街の至るところに十字架とマリアが飾られている、こぢんまりと、でも、とてつもなくカラフルに。今まで写真でさえ見たことのない街の様子、見るもの全てが新鮮で。どこからともなく聞こえるラジオの音やら、街を歩く人々、全てに興味津々。そして、バスは3時間ほどで目的地に。

町の外側にある長距離バスターミナルに到着。そこから町の中心に行くバスに乗り換えるのだけれど、地図の場所にバス停がない。どこがバス停なのか、どのバスに乗るのか、さっぱりわからない。

通りかかる人たちに聞いて、気付いたのが、彼らに英語は全く通じない。セントラルやバスという単語でさえ。これは大変。別の問題が発生。なんと、私はスペイン語が全く話せない。てことは、コミュニケーションが取れない。

私は大きな勘違いをしていた。合衆国の隣だから、人々は英語を話すものだと思っていた。英語は世界の共通語だと。彼らは全く英語を話さない。どうするの?これから。「セントラルに行きたい。」ただ、それを言いたいだけなのに、それすら伝わらない。泣きそう。

町の外にあるバス停。なかなか人が通らない。次のバスの到着を待つけれど、全く気配がない。早く、誰か通りかからないかなぁ。途方に暮れていたら、誰か来た!この貴重なチャンスを逃さないよう、しゃべるのはやめて、地図を指差して、バス停を教えてもらった。とりあえずバスに乗れる!よかったー!次の瞬間、感激はさらに大きくなる。

すごい装飾のバス!なにこれ!!ラジオの音量調節ができないのかというくらいの爆音で近づいてきて、私の前に止まった。初めて聴くスペイン語と楽しい音楽。乗り込むと内装がおしゃれ!おもちゃ箱みたいでウキウキする。そして扉がない。

バスの一番後ろで、しばらく自分の世界に浸っていた。ふと、気付いたら、ほぼ満席のバス中の乗客がこちらを見ている。子どもだけならまだしも、大人もみんな。目があったからといって、そらすわけでもなく、愛想笑いもない。「他人をジロジロ見てはいけない。」という観念がないみたい。経験することが、なんでもかんでも新鮮でおもしろい。

そんなふうに始まったメキシコ生活。

メキシコの昼間は、灼熱の太陽で外に出られない。なのに、たまにメキシコの麦わら帽子、ソンブレロをかぶった男性が炎天下で、置物のように座っていることがある。絵になっているんだけど、”私は、まぼろしを見ているんだろうか?” と勘違いするくらい暑い。それで、昼間は街も人々も昼寝の時間。

そんな時、土でできた建物の中はひんやりしていて気持ちいい。サンミゲルは、通りに面したところは、街の景観を保つための建物でなければいけない。それが土の建物。窓が小さいのは、暑さを家の中に入れないためだそう。昼間、なんだか暗いなと思っていたけれど、中に入るとひんやり、涼しい。生活の知恵だね。

そして夜になると、さらにワクワクすることが!彼らは昼間のシエスタの分、夜が長い。夜、街を歩くと通りの商店が開いていて、土づくりの建物の、小さな窓からこぼれる光。これがなんとも幻想的で絵本の世界に迷い込んだよう。どこからともなくラジオや音楽が聞こえて、夜でも陽気。露店もたくさん出ていて、おいしくて、楽しい。

メキシコは危険な国で、17時以降は外出はしない方がいいと、あとで知ったのだけれど、私がいた頃のサンミゲルは、ポリスもたくさんいて、24時間安全な街だった。アメリカ人移住者が多いらしいので、それも関係しているのかな。

町を歩けば、タコスの皮を売る、トルティーヤ屋さんからいい匂いがする。住宅街の中にあって、皆、量り売りで買っていく。トルティーヤは主食で、自宅で作った料理と一緒に食べる。

タコス屋さんもあるけれど、タコスは、各肉屋の店先で食べるのもおいしい。例えば、鶏肉屋さん。新鮮な鶏肉を売る店先にタコスを食べる場所があって、タコスを注文する。メキシコ人は、ハラペーニョをのせて、そこにタバスコまでかける。舌がしびれて味がしないよね、きっと。

パン屋さん、コーヒー屋さん、八百屋さん、アルコール屋さん、本屋さん、雑貨屋さん、市場、スーパーマーケット、いろんなお店を知って、知り合いも増えると、街に愛着が湧いてくる。1、2週間の旅行より、住む方が好きな理由の一つ。

サンミゲルには、おいしいカフェやレストランもたくさんあって、夜は至るところで、マリアッチが演奏している音楽が聞こえる。レストランの中の装飾がこれまた素敵。音楽が必要になった人が自分のテーブルに、マリアッチを呼んで演奏してもらう。それで周りの人たちも幸せな気分になる。

金曜日の夜、ラ・パロキアというピンク色の教会前にある公園は、人々が集まっていつもより増して、賑やかになる。彼らは、音楽があれば、そこはダンスをする場所に早変わり。「愛と音楽とダンス」に満ちた人生。幻想的な夜の時間は、灼熱の昼間があるから際立つのかな、本当に素敵。

サンミゲルはグアナファト州にある、こぢんまりとしたフォトジェニックな町で、映画の撮影にも使われたことがあるそう。一方、街のサイズが大きい州都のグアナファトも、カラフルで街全体の景色は圧巻。ピクサーの “COCO” の舞台がこのグアナファト 。どちらも2000mを超える高地にあるので、坂を歩くとすぐに息が上がる。暮らす場所としては、サンミゲルがいいな。

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