なんの質問?

「精神的に強いと思っていますか?」と唐突に聞かれた。何を聞かれているのか、どう答えれば相手の聞きたい答えになるのか、頭の中がハテナだらけ。彼は時々、日本語がへん。なんとか意図を汲み取ろうとするけれど、今回は無理だった。これを質問してきたのは、私が働く日本食レストランのマネージャーA、20代半ば。オーストラリアと日本のミックス。彼の頭の中でなにかを考えて、出てきた質問なんだろうね。前後の文脈なしでいきなりの質問。

彼は続けた。「ジャパレス(日本食レストラン)を辞めないで続けるって、強くないとね。」と。ということは「自分のことを強いと思っているでしょ。」=「図太いですよね。」って聞こえるのだけれど、日本人的深読みか。相手の質問に調子に乗って答えすぎると、今後足元をすくわれかねないので程々に、と思うけどそれにしても何をどう答えていいか、まだわからない。

誤解を招かないよう、相手が馬鹿にされたと思わないよう、正しい日本語で少しずつ答えてみよう、とさっきから頭の中はこんなことばかりがぐるぐる回っていた。なぜこんなに気を使うのか?彼には自信のない言動が多いから。彼は、「エラそうな人は、実は自信がないデキないやつ。」という定説を地でいく、エラそうなやつだから。デキる人は、偉そうにしないもんね。そして、なにも言っていないのにいつも保身的。誰かに責められて生きてきたのかな。

彼の性格は、オーストラリア人を名乗る気の小さい日本人。オージーの大らかさは、微塵もない。日本語理解の問題なのか、本当と冗談の区別がつかない。それで誤解をするのか、キレやすい。よって対等な会話は望めない。軽快な会話も危険。どこで地雷を踏むかわからないから。黙っておくのが一番だけど、慎重に言葉を選んで「図太いということ?」と聞いた。まず、自分を落とす。

「ジャパレスを辞めないで働くって、すごいと思う。例えばBにきつく言われて、辞めようとは思わなかった?」正直なところ、Bは取るに足りない存在だけど、そうとは言えなかった。そして「君も結構言ってたけど。Bだけがやったことにしようとしている?」「あのプレッシャーは辞めさせるつもりだった?」といろいろ言いたことを呑み込んだ。私の記憶を書き換える作戦に出たな、と思いながら。

「彼は、”そんな人”としか仕事をしたことがないから仕方ないよね。彼は自分がされたことを、そのまま他人にも同じことをしているだけで、これからよい人たちと仕事をするチャンスがあったらいいね。」と言ってみた。偉そうに聞こえていないか?勘違いするような言葉を使っていない?大丈夫か?と様子を伺いながら。こんなに対等に話せない人は久しぶり。

20代半ばの彼の経験値で、私の選ぶ言葉はどういうふうに受け取られるんだろう。彼を見下すつもりは全くないので、勘違いをして欲しくない、ただそれだけ。言葉を発しながら、頭ではそんなことを考えていた。私は生粋の日本人気質なので、他人から見た自分を演じてしまう。

彼は18歳から日本食レストランで働いているという。この人たちは、”そんな人”とずっと働いてきた。だから自分がされたことを他人にもする。それが正しいことだと信じて。子どもがまさにそうだよね、親が自分にしたことと同じことを他人にする。人間は関わる人に大きな影響を受ける。だからこそ、人生の大半を過ごすことになる職場は、選ばなければいけない。

彼の質問には、「私は精神的に強くないですよ。」とだけ答えた。そして、相手に興味を持っている風に「Aさんは、精神的に強いですか?」と聞いておいた。

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