上海には、素敵なレストランやおしゃれなカフェ、本場のおすすめちゅうごく料理やワールドワイドなおいしいもがたくさんある。だけどすでにガイドブックで紹介されているので、ここでは生活の中で見つけた、食堂で食べられるお気に入りの食べ物を挙げてみよう。
「麻辣湯」の店に入ると、いろんなちゅうごく野菜、ねりもの、豆腐、麺類などなどの具材がたくさん並んでいて、その中から食べたいものを選んでカゴに入れる。麺だけでも10種類を超える。ちゅうごく人に人気なのが直径10cmほどの揚げ麩。みんなのカゴをのぞくと、必ずこれが入っている。私は結局一度も食べなかった。
レジでお会計をした後、熱いスープで煮込んでくれる。なにも言わないと辛いスープなので「辛くないのでお願い」と注文する。しばらくすると番号を呼ばれて取りに行く。これが初めのうちは、ちゅうごく語の聞きとり練習の場になっていた。近所の麻辣湯屋は夜遅くまでやっていて、いつも満席。
「ちゅうごくの甘くないクレープ」。薄いクレープ生地に卵を落として甘い味噌を塗って、胡麻をふり、あとの具材はお店によって少しずつ違う。レタスの千切り、小麦粉を油で揚げたバリバリのお煎餅や揚げパン、ソーセージなどが入るので、作っているのを見ておいて、自分の番がきたら、食べたい具材を伝えるとそれで作ってくれる。
クレープは人気の朝食で、職場の近くにバイクで売りに来ていた女性のお店は、毎朝すごい人だかりだった。通勤の時間帯だけの営業で、フードコートの清潔感のあるお店でしか食べたことがなかった私は、勇気が出なくてまたいつかと思っていたら、ストリートフード店の規制が厳しくなって、そのお店は来なくなった。彼らは、立派な御殿に住むほど稼いでいたらしい。それで規制の対象に。
上海には「お粥屋」がたくさん並ぶ、お粥ストリートがある。正式な料理名は「潮汕(潮州)砂鍋粥」と言って、大きな土鍋で出てくるお粥で、広東料理だそう。出汁で煮込んだお粥をベースに、貝柱や海老、スペアリブなど好きな具材を注文して、さらに30分ほど煮込む高級お粥。これは絶品!寒い冬に食べるとほっこり温まる。
台湾発のお豆腐屋さん「桃園春村」。カフェのようなおしゃれな店内で、咸豆花という豆腐のスープを注文する。豆乳のスープも人気だけど、私は、食べ慣れている固形の豆腐で。固形といっても絹ごしのようなふんわりした食感。スープはだし醤油のようなしっかりした味で、桜海老、ネギ、きざみ海苔などがのっている。店では、豆乳、豆腐、揚げパン、ちゅうごくのおにぎりなど、ちゅうごくの朝食メニューが注文できる。朝早くから夜遅くまで営業している。
「茶館」。ちゅうごく茶を頂くお茶屋さんで、豪華な玄関を入ると、ちゅうごくの調度品などが置かれた個室に通される。いきなり異空間に迷い込んだ感じ。お茶を注文すると素敵なちゅうごく茶器で出てくる。お茶と一緒に、ちゅうごくのお茶菓子、ドライフルーツ、ケーキ、果物などが盛り付けられたものが目の前に並んで、心が躍る!店によっては麺類なども出される。予約は必須。
以上が気に入ってリピートしたお店。ここではコテコテちゅうごく料理は、挙がっていないけれど、そういうのもおいしい。ちゅうごく料理全般では、とにかく粉物、油物が多い。麺類はもちろん、小籠包などの包みもの、蒸しパン、揚げパンなど。そしてちゅごく料理で使う油の量は半端じゃない。だからおいしいんだろうね。スーパーで家庭用の食用油は、5Lが一般的なサイズとして売られている。小麦粉や油をできるだけ避けようとする日本とは、異なる食文化。
ここからは番外編。食以外にも、ちゅうごく4000年の歴史を感じる発見があって、彼らは冷たい飲み物を飲まない。体を冷やしてはいけないので、ウォーターサーバーに冷水機能がない。暑い夏でも、ぬるい水か、なんならお白湯。レストランでは冷たいビールがない。冬はアイスクリームを売らない。というか売れないのかな。
これは、中医(ちゅうごく医学)の考えからきているよう。切りはり治療する西洋医学に対して、予防や体質改善の東洋医学。中医の漢方や経絡、ツボは歴史の中で培われた知識。ちゅうごくにいる間、中医のクリニックにお世話になった。漢方、鍼灸、カッピング、マッサージ。ドイツ人経営のクリニックで、外国の利用者が多かった。みんな東洋医学の魔力に引き寄せられるんだろうな。
担当の先生はちゅうごくの方で、日本やアメリカでも働いたことがあって、日本語、英語を話し、西洋医学の医師免許ももつという教養あふれる先生だった。技術もすごいけど、知識もすごくて、治療中どんな話題でも、会話の楽しい先生だった。
そして、15年ほど治らなかった大人アトピーが少しずつ治ってきたのは、滞在最後の年だった。鍼灸、カッピング以外に、毎朝、本当に苦くて、臭い、漢方を飲んでいたおかげかな。即効性がないので何が効いているのかはわからない。それが西洋医学と違うところ。