経験って
それをすることで今までの自分の価値観が崩れ去り、新しい価値観を再び作り上げていくことです。すると、そこには経験前の自分とは違う、より安定した自分がいて、それが自信となるのです。経験を重ねることで、世界の見え方も変わります。
経験は様々な場面で起こります。難解な数式に挑戦し、答えを導くことも経験です。何気ない日常の中で、目の前の人たちによって突然、価値観を崩されることも経験です。崩された価値観を再構築していくときに悩んだり、苦しんだりして長い時間がかかることもありますが、それは、必ず自分を支えてくれます。
経験は突然やってくる
あるとき、氷河のそばの景色の良い山に登ろうと、友人たちと一日コースを選んで、朝から登っていたときのこと。途中、体調的に今日は無理だなと感じ、低いところを一人で歩くことにして別れた。地図通りに歩いたはずが、気づけばガレ場の斜面で足元が悪くなり、立ち上がってみると、身長より高かった木々は腰くらいの高さになっていて、高度が上がっている。地図とは違う場所にいる。
道に迷っていることに気づき、周りを見渡しても、どこに戻るのか見当もつかない。こうなったら方向音痴の私にとって地図はただの紙切れ。なんの目印もない大きな山の斜面に無力な人間がポツン。これは遭難というやつだ!急に不安になり、氷河の崩れる地響きのような音が聞こえて、恐怖しかなかった。大きな声で叫んでも、誰もいない。大きな声で泣いてみたけど、やっぱり一人。
泣くことは無意味、とふと我に返った。自分でなんとかするしか他に方法はない。ガレ場をずるずると下りると、すごく遠くに少し緑のついた木が見えた、あの辺りかな。目を凝らすと、人らしきものも見えた。一生懸命そこに向かって歩いたら向こうも私に気づき、私の顔を見るなり、りんごを差し出してくれた。涙が溢れた。
経験を重ねて自分をつくる
若い私はこの経験で、困難に直面したときに泣いたり、騒いだりすることに意味はなく、時間の無駄ということを知ったのです。手伝ってと言えない子供が、困ったときに泣いて人の気を引き、手伝ってもらうことを期待するアレですね。
また、自然の中で人間がいかに無力な存在かということも。日々の大小様々な経験が自分を少しずつつくっていくのです。